夫を初めて「ASDグレーゾーン」と疑ったとき⁺α

夫を初め「ASDグレーソーン」と疑った、あの時。

このことを語る前に夫との出会いについて、触れておくのが先だろう。

 

夫と私は某マッチングサイトで知り合った。
夫のプロフィールに興味を持ち、「いいね」的反応を私から投げたことがキッカケだったと記憶している。

それからメールをやり取りし、実際会うようになったのは必然のことだった。
それなりに違い所に住んでいたため(車で6時間)、月に1度のペースで双方の中間地点の街で会うようになっていた。

 

ユニークで余り身近にいないタイプの人だなとは思っていたものの、メールのやり取りや月1回会う際に、特段違和感を感じたことはなかった。
寧ろ長子同士ということもあるのか、「ウマが合う」ことが嬉しかった。
ただ不思議だったことが、私の実家事情を話しても引くことなく、冷静に受け取めてもらえたこと。(大抵話すと絶句されるか、引かれるかどちらかだった。)
不思議な人だなあと思いつつ、私に起こった出来事を真正面から受け止めてもらえたことの喜びの方が勝っていた。


「冷静に人間関係を捉えることができる人」である夫とは、うまく関係性を築くことができていた。
正式にプロポーズを受けた翌月に会った際、それとなく将来のことを話したことがあった。子供を持つか持たないかの話である。

 

今でこそ「子は持たない」としっかり話し合って決めてはいるものの、結婚前の私は少々浮かれていた。
そんなこともあり、「持ってみたいなあ」みたいなことをポロっと口にしてしまった。
すると夫は「自分は子供は望まない」ということを理由を含め淡々と話し始めたのだ。
余りにもはっきり否定されたので、当時の私はすごくショックを受けてしまった。

 

「そこまではっきり言わなくてもいいのに」
その日の帰り、少し泣けてしまった。何でこのことにまだ結婚前なのにはっきりと否定できるのだろう。それ以外は何の申し分もないステキな人なのに。
夫に対して最初に不穏を感じたきっかけだった。

 

ただ、不穏に感じただけでこれでASD(グレーソーン)だと疑ったわけではない。
しかし何となく、結婚後にうまくやっていけるのか不安になってしまったのだ。

 


それでも数か月後、私は結婚の為に一旦夫の暮らす街に生活の拠点を移した。
その後すぐに夫の両親へのご挨拶、同棲結婚と数か月の内に段階を踏むのだろうと思っていたのだが、驚くほどに上手くいかなかったのである。(実際、入籍迄1年以上かかることになる……)

 

夫本人からすると、色々とタイミングを図っていたようだった。
そのことは結婚後に知ることになるのだが、私が思い描いた「一般的な結婚の流れ」と「夫の考えていた結婚への流れ」とは大きく違っていたことに戸惑いを隠せなかった。(ただ、タイミングがグズグズだったおかげで私自身の特性を知り得て、夫の理解も得られたので、結果オーライではあった。)

 

無事に義家族にご挨拶を済ませ、入籍を迎えるまで指折りになったある日のファミレス。
そこで、夫が幼い頃に起こったことを教えてくれた。

周囲になじめず、不遇だった子供時代を訥々と。

 

周りに馴染めるように自分なりに努力はしたが、逆効果だった、と。
両親に訴えても「自然に馴染んでいくもの」としか言われず、違和感を持ちつつも全く疑うことがなかった、と。
学校には「行くだけ」で何も身に入らなかったし、自分の中に何も残っていない、と。

 

これまで一切他人に話すことなく封印し続けた、夫の事実。

 


「ああ、これは…」
何となく、過去に実弟対応のために読んだ本の内容が浮かんだ。あの本の中身に何か似てる。
この一連の話を聴いて初めて、夫がASD(グレーゾーン)ではないかと疑った。

 

ただこの場では言えなかったし、言うべきではなかった。
長い間他人に話すことなどなかった、そんな抱えてきた思いを意を決して話してくれているのだ。

「夫さんが悪いわけではない。土地に夫さんが合わなかったんだ。」

この一連の話中で一番無難な落としどころはこの点しかない。
「血縁のある家族でもソリが合わない」ことを知っている私は、考えに考えてそう伝えた。

 

「夫さんにも少しは理由がある」なんてことは口が割けても言えなかった。
色々考えながら聴き、夫が置かれてきた状況とまさかのASDかもしれないという思いが複雑に交錯し泣けてきた。

 

実家から解放されると思っていたのに、思いもよらないところに「似たような繰り返しポイント」が発見されるなんて……と心の中で苦笑いするしかなかった。

「まあ、そういう星回りなのかもしれないな……」

 

 

私はここで「グレゾ夫」と向き合うことに腹を決めたのだった。